プロジェクト

ビラ以外のものを新入生に配ってみる

ライター:江坂大樹

春になると大学には新入生であふれるので、あらゆるサークル・部活が勧誘のためのビラを配っていて列ができている。新入生も在学生もうかれる時期だ。

僕たち大学生の自由研究はビラを配るのが苦手なのでビラは配布していないが、ビラ以外のものなら配れる。

いろいろなものを配ってみた。


エックス配りルール

このプロジェクトはビラ配りの列に混じってビラではないなにかを配るので「エックス配り」と名付けた。エックスには様々な「配るもの」が入る。「風邪」が入ってもいい(配るつもりなら)。

せっかくなので何種類か配って、みんな何が一番ほしいのか比べたい。そこで決めたルールはこうだ。


・平日毎朝8時15分から8時45分まで配る

・1種類につき50個配り終えたらおしまい

・配り切れるまでの時間または配れた個数を比較する


ビラ配りをしたことがないのでこういうとき何個用意しておけばいいのかがわからない。はじめに言ってしまうと、結局一度も50個を配りきれることはなかったので、いま家にたくさんの「エックス」が余っている。つまりゴミである。もったいないのでまだ捨ててないけど。

ややピークの時期を過ぎてしまったもよう

場所は「名古屋大学全学教育棟前」という、新入生がもっとも通るスポット。先日雨で池になっていた場所である。新学期がはじまってすこし経っていたのでビラ配りの人はそんなにたくさんはいなかったが、いま名大でもっともうかれているのはここで間違いない。



①ビンゴカード配り
なんて穴を開けたくなる紙なんだ

エックス配りひとつめは「ビンゴカード」だ。ビンゴというのは盛り上がるし、景品があたってうれしい。そんなビンゴはこのビンゴカードがないとできないのだ。どうだ、ほしいだろう。

多くの人は、

ビンゴカードを配っている→ビンゴをやっている→景品が当たる→1等のディズニーランドペアチケットが当たるかもしれない

という計算を瞬時に行ってビンゴカードをもらいたくなるのではないか。僕ならとりあえずもらっておく。ビンゴをやっていないのにビンゴカードを配ってるなんて「まさか」である。

「ビンゴカード配ってます、どうぞー」

しかしなかなかビンゴカードは受け取ってもらえない。いまこれがまさにその「まさか」の状況だからだろうか。もちろん景品はないしビンゴをやってすらいない。

でもそれを確かめるすべはないはずなのだけどな。

よく考えたらこれはみんなを騙していることになるので、いま文章を書いていて申し訳なくなってきた。(と言いつつ真顔で文章をタイピングしています。でもだましてごめんなさい。)

配った個数:  3



②ビー玉配り

ビンゴカードは受け取り手の心理を考えすぎてしまったので、結果みんなをだますことになってしまった。できればもうそういうことはしたくない。

次はもっとシンプルにきれいで丸いビー玉を配ることにした。理由はきれいで丸いから。ビンゴカードのときと比べると純粋な気持ちだ。パッケージ描かれているイラストにも邪悪さは微塵もなくて天国みたいである。

久しぶりにビー玉をみたけど、きれい
「ビー玉配っていまーす」

配ってるもの自体はおかしくないのだけど、状況としてはややおかしくなってしまった。ビー玉が配られることなんてないので、怪しさ満点かもしれない。へんな薬だと思われていないか心配である。
それでも9人の人にもらってもらえた。ビンゴカードより多い。暇な授業中に転がして遊んでほしい。でも、まだまだ少ないほうである。先輩がいたら怒られてしまう量だ。まだ配り足りない。

配った個数:  9



③5円玉配り
次はついに現金

玉は玉でもこんどは価値がわかりやすいお金にした。その価値のたとえにうまい棒を出そうと思ったが、そうすると価値が低い気がしてしまうのでやめた。(5円玉はうまい棒の半分しかない!)

5円玉を配ってる人なんて見たことないので、受け取る人がどんな気持ちなのか想像がつきにくい。しかし明らかに前日までとは新入生の反応が違った。

「絶対怪しいと思われてますよ」

目の前を通り過ぎた人たちから「えっ」「お金!?」「(5円玉だ)」と、いろいろ言っているのが聞こえてきた。5円玉は配られるとびっくりするのだ。

5円玉を受け取る人にも「本当にいいんですか?」と、わざわざ足をとめて確認をされた。うまい棒よりも価値は低いけど、5円玉は許可がいるのだ。うまい棒は許可をとらずにもらうのに。いったいどうなっているんだ。

5円玉とうまい棒を通して価値の概念が揺らいでいるので、のび太ならこのあたりで間違えてうまい棒を5円玉と交換しそうである。

配った個数:  9



④風船配り
風船は楽しそう

こんどはシンプルに楽しげな風船を配った。風船についてはこれといって書くことがない。「ふうせんっていいよね」くらいしか言えないのだが、それはカレーだってそうである。

「ふうせん配ってます」

配っている姿はいままででいちばん自然だし、言ってることも何一つおかしくない。なんとなく大学の景色が遊園地にみえなくもない。

風船は15個もらってもらえた。2ケタはうれしい。いままでのものと比べると風船は「でかい」ので、配っているものがよくわかって受け取りやすかったのかもしれない。ビー玉だと小さくてよく見えないので、受け取ったら梅干しだったなんてこともありえなくはない。

僕なら梅干しのほうが嬉しいかもしれない。

配った個数:  15



⑤おみくじ配り
はじめて内容のあるもの

さいごはおみくじ。もらってから中を見る楽しみがある。ふうせんは邪魔だといってあとで返しにきた人もいるくらいだったけど、おみくじでそれはやめてほしい。凶ばかり僕の手元にたまって不幸になるから。

一緒にエックス配りをしていたメンバーのキタダもこの日は自信が違った。

「これはいける気がする」

おみくじはぜんぶで21個もらってもらえた。たしかにいけた。いままでで一番多い。

もらう人の目もいちばん輝いていて配っていて気持ちよかった。

神社の宮司さんや巫女さんはこんな景色をいつも見ているのだと考えると、神社で働くこともありかなと思えてくる。駅員さんが遅延証明証を配っているときには絶対に見ない景色である。

配った個数:  21

エックス配りの結果、ビラ以外に新入生にものを配るならおみくじがいいということがわかった。

ほんとうは僕は5日目に肩たたき券を配ろうとしたが、他のメンバーは誰も賛同しなかったのでやめた。


5種類配って満足

ビラ以外のものなら配っていてけっこう楽しかった。ちかくでビラを配っている人を見ていたけど、新入生がビラをよけて歩くのでリニアモーターカーみたいになっていた(配る人がレール、新入生がリニア)。

散々言ったけど、ここで他の団体は新入生を本気で勧誘していることを忘れてはならない。

大学生の自由研究はこのエックス配りのようすからもわかる通り、ちゃんと勧誘をしていないのでメンバーがあまり増えない。「おみくじが一番もらってもらえるぞ!」という役に立たなさそうな情報ばかりが増えていくのだけど。

エックス配りのまとめ。2段目の食品は僕の昼食です

よく大学生の自由研究はもうメンバーを募集していないとかってに思われてますが、常にやんわりと募集してるので、興味のある人は連絡をください。(ことしは新歓ビラは配ってません)

けっこう突然メンバーになりたいと言ってやってくる人はいます。